快晴、雪質もバッチリ。
最高のスノーボード日和。
お昼頃までに、順調に滑走本数を重ねていく。
気分も良く、スピードレンジも上がる。
突然、逆エッジをくらう。
一瞬で世界が反転。
なのに時間は恐ろしく、ゆっくりに感じられた。
一回転して、 背中から地球に衝突。
「痛った!」と叫ぶ暇もなく。
雪面に叩きつけられた瞬間、世界から音が消えた気がした。
1. 無力
雪面に叩きつけられて、肺から空気が全部フッ飛んだ。
横隔膜がフリーズして、静寂が訪れる。
息ができない。
サーキットでスピンした時の「死ぬかも」っていうスリルとは、 次元が違う。
このままでは「死ぬ」という確信。
スピンには、ハンドルを握る「私」と「車」という対話がまだあった。
酸素という燃料を失って、 静かに終わろうとしている。
今の私には何もできない。
ちょっと高いところから、他人事みたいに眺めている感覚。
2. 天を仰ぎ見る、その贅沢さ
数秒の静寂後。
カハッ、と肺が蘇って、冷たい空気が流れ込んできた。
システムの再起動。
そこで初めて、「天を仰いでいた」ことに気づく。
あの時見た青空は、人生のどの瞬間よりも鮮明で、圧倒的な「生」を感じさせた。
3. 時間と気づき
死が隣に座っていたあの数秒間。
重力と酸素に支配された「物質」であることを思い知らされた。
だからこそ、指先の温度も、窓の外に見える何でもない景色も、全てがギフトに感じられる。
この瞬間も、何事もなかったように執筆ができている。
運が味方したのと、無意識に「受け身」をとっていたことが大きいだろう。
学生時代に授業で習った、柔道の基本が生きたのだ。
人生では、後に「気づく」ことの方が圧倒的に多い。
4. 後悔しないために
私たちは、自分の時間を「減らない貯金」だと思い込む節がある。
だが実際は、一秒ごとに酸化していく「生鮮食品」に近いはずだ。
やりたいことを、「いつか」というゴミ箱に放り込んでいるかもしれない。
私たちのハードウェアは確実に摩耗し、 OSのサポート終了に向かっている。
「時間」という概念が、 ただの数字ではなく、「酸素を吸える残りの数」であることを私は思い知った。
あなたというシステムが最もフレッシュなのは、今。
私は空を見上げるたびに、問いかけずにはいられない。
「ねぇ、その貴重な時間。大切に扱えてる?」
